歯科医院の勤務表(シフト)の作り方|常勤・非常勤と必要人数のそろえ方
歯科医院の勤務表は、「日ごとに職種別の必要人数を決める」→「常勤・非常勤の勤務条件を並べる」→「希望休を入れる」→「足りない日を直す」の順に作ると、組み直しが減ります。 先に必要人数を決めておくことが、いちばんの近道です。 この記事では、手順と、勤務表で押さえておきたい労働時間・休憩・休日の決まりをまとめます。
勤務表づくりで手間がかかる理由
勤務表に時間がかかるのは、条件が人ごとにばらばらだからです。
- 常勤の歯科衛生士は週休 2 日、非常勤は火・木の午前だけ
- 歯科助手のひとりは子どもの送り迎えで夕方に入れない
- 土曜は患者さまが多く、歯科衛生士を多めに置きたい
- 希望休が月の半ばに口頭で届く
これを頭の中で組み合わせ、さらに「この 2 人が同じ日に休むと回らない」といった事情も考えます。条件を書き出さないまま組むと、毎月同じところで悩むことになります。
手順 1:日ごとの必要人数
最初に、曜日と時間帯ごとに、職種別の必要人数を決めます。予約の入り方から逆算するのが確実です。
| 曜日 | 時間帯 | 歯科医師 | 歯科衛生士 | 歯科助手 | 受付 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月〜金 | 午前 | 2 | 2 | 2 | 1 |
| 月〜金 | 午後 | 2 | 3 | 2 | 2 |
| 土 | 終日 | 2 | 3 | 2 | 2 |
(数は例です。ユニットの数と、歯科衛生士が担当する予約の枠の数から決めます。)
ポイントは次の 2 つです。
- ユニットの数と合わせる:歯科衛生士の枠を 3 本並べるなら、その時間に歯科衛生士が 3 人要ります。
- 最低人数と、いると助かる人数を分ける:最低人数を割る日だけを「人が足りない日」とすると、直す優先順位がつけやすくなります。
手順 2:常勤・非常勤の勤務条件の書き出し
次に、スタッフごとの条件を一覧にします。
| スタッフ | 職種 | 雇用 | 毎週の休み | 時間の条件 | 週の上限 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 歯科衛生士 | 常勤 | 日・木 | なし | 5 日 |
| B | 歯科衛生士 | 非常勤 | 日・月・水 | 午前だけ | 3 日 |
| C | 歯科助手 | 常勤 | 日・水 | 17 時まで | 5 日 |
| D | 受付 | 非常勤 | 日 | なし | 4 日 |
雇用契約で決めた曜日・時間・日数をそのまま書きます。ここを口約束のままにしておくと、勤務表のたびに確認が要ります。
手順 3:希望休の反映
希望休は、締め切りと出し方を決めて集めます。
- 毎月の締め切り日を決める(例:前月の 10 日)。
- 出し方を一つにする(紙の申請表か、スマホからの申請か)。
- 締め切り後に勤務表を作り、確定日を伝える。
口頭やメッセージで届くと、書き写しの漏れが起きます。
手順 4:足りない日の確認と調整
条件を入れて組んだら、日ごとに必要人数と見比べます。足りない日は、次の順で直します。
- 非常勤のスタッフに、勤務日の入れ替えを相談する。
- 希望休が重なっている日は、早く出た希望を優先するなど、決めたルールで調整する。
- それでも足りない日は、予約の枠を減らす(歯科衛生士の枠を 1 本閉じる)。
予約の枠を減らす判断は、勤務表が決まる前に予約が入りすぎないよう、早めにします。
勤務表で押さえておきたい決まり
勤務表は、労働時間・休憩・休日の決まりの中で組みます。主なものを条文と合わせて整理します。
| 決まり | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 休憩を除き、1 週 40 時間・1 日 8 時間を超えて働かせてはならない | 労働基準法 第 32 条 |
| 小規模の特例 | 保健衛生の事業で常時 10 人未満の労働者を使う事業場は、1 週 44 時間・1 日 8 時間まで | 労働基準法施行規則 第 25 条の 2 |
| 休憩 | 6 時間を超えるときは 45 分以上、8 時間を超えるときは 1 時間以上 | 労働基準法 第 34 条 |
| 休日 | 毎週少なくとも 1 回、または 4 週を通じて 4 日以上 | 労働基準法 第 35 条 |
| 時間外・休日労働 | 労使の書面の協定(36 協定)を結び、届け出た範囲で | 労働基準法 第 36 条 |
歯科医院は「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」(労働基準法 別表第一 第 13 号)にあたります。常時 10 人未満の医院では週 44 時間の特例が使えます。スタッフが 10 人以上になると週 40 時間になるので、人が増えたときは勤務表の組み方を見直します。
また、常時 10 人以上の労働者を使う場合は、始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇などを就業規則に定めて届け出る必要があります(労働基準法 第 89 条)。勤務表は、就業規則で決めた時刻・休日と食い違わないように作ります。
予定と実際の時間の記録
勤務表は予定です。実際の始業・終業の時刻は、別に記録します。厚生労働省のガイドラインは、使用者が労働日ごとの始業・終業の時刻を確認し、記録することを求めています。着替えや、診療後の片付け・清掃を指示して行わせた時間も、労働時間として扱うとしています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。 診療が延びやすい日は、勤務表の終わりの時刻に余裕を持たせておくと、記録と予定の差が小さくなります。
勤務表に入れる有給休暇
年次有給休暇は、6 か月継続して勤務し、全労働日の 8 割以上出勤した人に 10 日与える決まりです(労働基準法 第 39 条)。週の勤務日数が少ない非常勤のスタッフにも、日数に応じて与えます。 年 10 日以上与える人には、そのうち 5 日を 1 年以内に取ってもらう必要があります(厚生労働省「年次有給休暇の時季指定」)。勤務表を作るときに、有給の日も一緒に入れておくと、取り忘れが防げます。
毎月の作り方の決まり
勤務表づくりを毎月の決まった流れにすると、担当者が替わっても回ります。
- 前月の 10 日:希望休の締め切り
- 前月の 15 日:勤務表の案を作る
- 前月の 20 日:足りない日を調整して確定
- 確定後:スタッフに共有し、予約の枠を調整する
勤務表でよくあるつまずき
| つまずき | 対処 |
|---|---|
| 毎月ゼロから作り直している | 曜日ごとの基本の形を作り、そこから希望休を反映する |
| 特定の人に土曜が集中する | 土曜の勤務回数を月ごとに数えて、偏りを直す |
| 非常勤の勤務日数が契約を超える | 週の上限を一覧に書き、作ったあとに数える |
| 確定後の変更が口頭で済まされる | 変更は必ず勤務表に戻し、日付と理由を残す |
勤務表は、作った人しか分からない形にしないことが大切です。条件の一覧と毎月の流れを残しておけば、作る人が休んだときも代わりの人が作れます。
よくある質問
勤務表は誰が作るのがよいですか?
院長が作る医院も、事務長や受付のリーダーが作る医院もあります。誰が作る場合も、必要人数と勤務条件を書き出しておけば、引き継ぎができます。
非常勤のスタッフにも有給休暇はありますか?
あります。週の所定労働日数が少ない人には、その日数に応じた日数を与える決まりです(労働基準法 第 39 条)。具体的な日数は、労働基準監督署や社会保険労務士に確かめてください。
勤務表を作ったあとに変更が出たら、どうしますか?
変更は必ず勤務表に戻して記録し、変更したことを本人に伝えます。予約の枠にかかわる変更なら、受付にも同時に知らせます。
勤務表は、いつまでにスタッフに渡せばよいですか?
法律で決まった日はありませんが、スタッフが予定を立てられるよう、前月の中ごろから後半には渡すのが安心です。渡す日を決めて毎月守ると、希望休の締め切りも守ってもらいやすくなります。
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